第四章
世界の見え方が
変わり始めた日

全7章

藁にもすがる思いで、その場所へ向かいました。

正直、大きな期待はしていませんでした。

これまで何度も相談を受けるたび、
期待は失望へと変わってきたからです。

「もし、ここでも何も変わらなかったら……。」

そんな思いを抱えながら、
私はその扉を開きました。

当時の私は、
カウンセリングを受けるつもりでいました。

しかし後になって知ることになります。

あの日私が受けたのは
一般的なカウンセリングではなく
心理セラピーだったということを。

もちろんその時はそんな違いも知りません。
ただ一つだけ感じたことがありました。

「今までとは、何かが違う。」

これまで受けてきた相談でも、
うつ病の症状や現在の状態について
話を聞いてくれました。

もちろんこの方もそうでした。

でもこの方が本当に見ていたのは、
症状ではなく、私の人生だったのです。

普段どんなことに苦しみ、
どんな出来事があり、
どんなことに生きづらさを感じてきたのか。

今の状態だけではなく、
その背景にあるものを
丁寧に知ろうとしてくれていました。

私は以前から、
原因を見なければ、
本当の解決にはつながらない。

そんな感覚をどこかに持っていました。

でもこれまで受けてきた相談で、
原因まで丁寧に向き合ってもらえたと感じたことは、ほとんどありませんでした。

だからこそ、その話の聞き方に自然と引き込まれていったのだと思います。

相談中、ホワイトボードには
「今日のテーマ 人生にFIT感がない」
と書かれていました。

そして、こんな話をしてくれました。

「仕事では客観が求められます。
でもそれを日常でも続けてしまうと、
自分の気持ちや感覚を置き去りにしてしまう。」

私はそれまで、
自分の心から少しずつ離れながら生きていたことに、
その時初めて気づきました。

今までの生きづらさの理由が、
少し見えた気がしました。

さらにこの方は、
なぜその問題が起きるのか。
なぜ今の状態になっているのか。

その背景にある因果関係を、
一つひとつ丁寧に説明してくれました。

話を聞きながら、
「なるほど。」
「だから、こんなにも苦しかったのか。」
と、何度も心の中でうなずいていました。

話を聞けば聞くほど、
今まで見えていなかったものが、
少しずつ見えてくる感覚がありました。

「どうして、そこまで分かるんだろう。」

まるで自分でも気づいていなかった心の奥に
触れられているような感覚でした。

私も、自分の本当の心に触れてみたい。
そして、それを自分で確かめてみたい。
そう思いました。

人生には、
まだ私の知らない見方があるのかもしれない。

そう思えたこと。

それが長い絶望の中で初めて見えた、
小さな光でした。

← 一つ前の章へ戻る